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遺伝カウンセリングのご案内

「遺伝に関すること」

悩みをお持ちの患者様やご家族と一緒に考えます

 

遺伝とは

 60兆個のわれわれの身体をつくる細胞は、すべて30億文字の遺伝情報を持っています(普遍性)。細胞の核の中の染色体に、遺伝子が格納されています。父親と母親、それぞれから1組ずつ受け継ぎ、2組の遺伝子が1つの受精卵から60兆個の細胞への増殖と分化を制御しています。この遺伝情報は個々人で特異的であると同時に(特異性)、原則的に一生変わらず不変的です(不変性)。さらに、もう1つ考えておくべき重要なことは、家族(親子、兄弟姉妹など)では、お互いに共有している遺伝情報が存在することです(共有性)。
この遺伝情報に何らかの異常があると、病気になることがあります。しかし、また何らかの別の異常によって、われわれ人が小さな生き物から進化できたことも事実です。われわれ誰もがみんな遺伝性疾患の原因となる遺伝子の異常を数個以上は持っているといわれています。遺伝情報の異常は、われわれ生物が持つ多様性の1つともいうことができましょう。
先天異常、がん、生活習慣病(糖尿病、高血圧、肥満)などの多因子遺伝性疾患についても、遺伝的背景が解明されつつあり、発生発症や進行の重要な決定因子が明らかになっています。これらの疾患について、遺伝的な体質に適した生活環境を整備したり、予防薬の投与を行ったり、発症を未然に防ぐ医療が始まろうとしています。遺伝情報をこのような予防医学の領域で生かしていく上でも、遺伝カウンセリングの重要性は今後ますます高まるものと考えられます。


遺伝カウンセリングとは

 30億文字(塩基対)にもおよぶ人の遺伝情報(ゲノム)の解読が完了し、近年の遺伝医療は長足の進歩を遂げています。さらに、今世紀中には遺伝医療が新規の遺伝子診断や遺伝子治療へと展開し、予防医療の観点からも患者様やご家族に大きな福音をもたらすことでしょう。
遺伝性疾患は遺伝する病気ではなく、遺伝情報をになう染色体あるいは遺伝子の異常に起因する病気をいいます。現在では多くの病気にこの遺伝的な要因が関与していることが明らかになっています。遺伝医療の発展により病気の遺伝的な側面を知ることは、患者様やご家族に新たな不安や悩みを生み出し、遺伝子検査の是非、個人の遺伝情報の漏洩、プライバシーの侵害、遺伝的差別など、さまざまな社会的、倫理的な混乱を招く引き金ともなりかねません。
遺伝カウンセリングは、このような遺伝性疾患の患者様やご家族、あるいは遺伝的問題に不安や悩みを持つ方々に対して、倫理的な配慮のもと、ご本人の自由な意思決定に基づいて生活設計上の選択を行い行動できるように、臨床遺伝専門医が遺伝医学的見地から適切な情報を提供し、さらに臨床心理士が心理的にサポートする診療行為です。

 

口唇口蓋裂についての遺伝カウンセリング

 口唇口蓋裂を含む頭部顔面口腔先天異常を有する患者様のご家族および患者様ご本人(クライアント)に対して、臨床遺伝専門医、口腔外科医、小児科医、臨床心理士、看護師、言語聴覚士、臨床検査技師が遺伝カウンセリングチームを形成して、遺伝医学的な情報の提供と心理社会的なサポートを行います。単一遺伝性疾患・多因子遺伝性疾患・染色体異常に関する説明、理論的・経験的再発率の推定などを実施し、自発的な意思決定を援助し、さらに心理社会的側面を支援します。
遺伝カウンセリングに対する社会的、倫理的なニーズが高まっており、これまでの日常診療や遺伝相談での対応をステップアップする形で、遺伝に関わる疾患を、専門診療科と合同で臨床遺伝専門医が中心に口唇口蓋裂を中心としたカウンセリングが行われています。


お問い合わせ
愛知学院大学 口腔先天異常遺伝学・言語学講座
(安部浩平初代日本口唇口蓋裂協会理事長記念寄附講座) まで
http://www.aichi-gakuin.ac.jp/~cag_sp/